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水道水とアスベストの関係(3)飲むリスクと吸い込むリスクを同列に並べる非科学 [健康情報、本当の話]

水道水とアスベストの関係。これまで見てきたように、中村三郎さんの『水道水も危ない!』(酣燈社)では、過去の数字で、現在が危機であるかのように書き募っています。

しかし、過去に水道水に多くのアスベストが混入していたことも確かです。同書が信用ならないものであったとしても、引き続き疑問は残ります。

「アスベスト管の問題は現在は解決しているだろうが、過去使っていたことに対するリスクがクリアになったわけではない。アスベスト管を使っていた当時に飲み込んだアスベストで健康被害は起きないのか?」

不安に思われる方の中には、そう考える方も少なくないでしょう。

結論から述べると、「アスベストを吸い込む」ことと、「アスベストを飲み込む」ことは、リスクとしては全く区別されています。

「吸入されたものよりは体から排出されやすい。経口摂取されたアスベストと病気の関連はまだ確証されていない」(『リスクメーターではかるリスク』)というのが結論です。

それは、現在だけでなく、20年前の「長沢・蔵楽報告」のときからいわれていました。



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その証拠として、「第110回国会 参議院決算委員会」(1987年11月12日)における、日本社会党・菅野久光議員と、厚生省生活衛生局・森下忠幸水道環境部長のやりとりを、少し長くなりますが当時の状況や考え方を知るために引きます。

「○菅野久光君 先日、東京都内の水道水から石綿を初検出したことが報道されましたけれども、都では六十五年度までに順次撤去する方針のようですが、厚生省として水道水の石綿汚染についてどのように把握しておられるのか。また、全国的に石綿管を使った水道の状況、それをどのように把握されておるのか。把握しているとすればどのような対策を立てようとされておるのか。その点をお伺いいたしたいと思います。

○説明員(森下忠幸君) 石綿を飲み込む、経口摂取をいたした場合に健康にどんな影響があるかということにつきましては、これは国際的にも因果関係がまだはっきりしておりません。つまり、一般的には吸入による影響に比べまして、飲み込んだ場合の影響は極めて少ないというふうにされております。

現在アスベスト、石綿に関しまして水道の水質基準を決めた国はございませんけれども、米国でいろいろな研究がされております。

それは、石綿の繊維を長さを二通りに分けまして、十ミクロン、つまり百分の一ミリより長い繊維のものを動物に食べさせた場合、それからそれよりも短いものを食べさせた場合、いろいろ比較いたしまして、その結果、十ミクロンより長い繊維を食べさせた場合には動物実験で一応疑わしいというふうな結果が出ておりますので、これは米国政府の毒性調査計画の一環として行ったものでございますが、その結果に基づきまして一つの試算をいたしまして、一リットル当たり七百十万本の繊維というものを一つの水質目標値ということで定めたらいかがかということを米国の環保で今提案しております。そういう状態でありますから基準はまだございません。

今回公表されました東京の昭和女子大学の先生それから東京都衛生局のデータによりますと、この十ミクロン、つまり百分の一ミリを超えました長い繊維は水道水の中には出ておりません。

ということで、私どもは水道水の中ではこの問題は今のところ問題となるレベルではないと考えております。

しかしながら、この問題につきましては、当省といたしましては十分関心を持っておるわけでございまして、現在内外のこういった知見の集積に努めておるわけでございまして、まず問題になりますのは、分析の方法が難しい。

つまり電子顕微鏡を必要といたしますけれども、そのほかにエックス線回折装置というものが必要でございまして、この両方を備えた試験機関が日本にまだわずかしかございませんものですから、こういった非常に高度な機械を使い、高級な技術を使う分析の方法以外に、もう少し簡便な方法はないかということで今研究をさしておりまして、こういった成果を踏まえて調査をいたしたいと思っております。

それから石綿セメント管は昭和三十年代に非常にたくさん使われました。安いということで使われましたが、また一方で強度が弱いということで、一定の年数に達したものにつきましては、その破損あるいは漏水を防止する観点から取りかえをしております。

これは別にアスベストの問題ということでなく、破損による問題を防ごうということでございまして、そういったものにつきましては、簡易水道などにつきましては補助金も出しまして更生をさしております」

要するに、検査も難しくアスベスト管の交換なども行うが、飲用については無問題としているわけです。

2005年には、厚生労働省健康局水道課が、「水道管に使用されている石綿セメント管について」という通知を出しています。

同省(健康局水道課)が、1992年に改正した水道水質基準の検討時にアスベストの毒性を評価したものの、アスベストは呼吸器からの吸入に比べ経口摂取に伴う毒性はきわめて小さく、水道水中のアスベストの存在量は問題となるレベルにないことから、水質基準の設定を行わないとしています。

つまり、別にアスベストがいくら入ってても構わないよ、ということです。

WHOの飲料水質ガイドラインでも、マウス実験でアスベストには生殖毒性、胎児毒性、催奇形性は認められず、変異原性もほぼ観察されないので、こちらも「健康影響の観点からガイドライン値を定める必要はないと結論できる」としています。これが現在の回答です。

考えてみれば、もし水道水に問題があれば、それこそクボタショックの比ではなく、全国民的にアスベスト病が蔓延するはずです。

しかし、2013年現在、そんな話は聞いたことありません。

ただ、中村三郎さんは、こうしたWHOや厚生労働省の結論に懐疑的なようです。

アスベストが、「血液とともに全身をまわってすい臓、腎臓、脾臓、肺、脳などの他臓器に移行して蓄積される」「体内の各臓器にアスベスト小体が蓄積されるということは、経口摂取によっても発ガンの可能性があることを示唆している」といった推理を開陳しています。



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いろいろな推理はあっていいのですが、少なくとも現在のWHOや厚生労働省の見解、さらにはこれまでアスベストとがんの関係を調べたさまざまな疫学研究とその結果(がんとの関連なし)をまずはきちんと示すべきです。

そして、その上でそれらはこれこれこういう点で疑問があり、私はこんな仮説を立てていると論理的に説明をしなければならないと筆者は考えます。それが、現在の科学的水準にたった推理というものです。

中村三郎さんは、そうした現状と仮説をフェアに書き連ねていません。

自分の都合の悪い研究結果は見せないで、一方的に自分の推理だけを書かれても現実の科学的追及の方向性とは噛み合わないし、読者の理解の助けにはならないでしょう。

続きはコチラ>>
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九子

すけっとさん、こんばんわ。
nice!有難うございました。m(_ _)m

すけっとさんのスタンス、とても好ましく思います。
私も、どちらかと言うとバイオ栽培の野菜やらなんとか水やらを有り難がる現代の嗜好をちょっと覚めた目で見ています。
この本を含めて、読んでみたいと思います。

これからもよろしくお願い申し上げます。( ^-^)
by 九子 (2010-09-13 21:31) 

akahara

ご訪問&nice!ありがとうございました。
これからも宜しくお願い致します。
by akahara (2010-09-13 21:39) 

スマイル

はじめまして
お越しいただきありがとうございます☆
私も、政府や社会のまやかしがとても気になります。
しかし、正しい情報をきちんと得ているとは言えず
抜け落ちていることがたくさんあります。
すけっとさんのように、きちんと調べてらっしゃる方の
情報は、とても有り難いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
by スマイル (2010-09-13 23:08) 

aloha-happylife

ご訪問&niceありがとうございました♪
by aloha-happylife (2010-09-13 23:56) 

kaoru

こんばんは。
ご訪問下さり有難うございます。
by kaoru (2010-09-14 00:43) 

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