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『病気にならない生き方』(新谷弘実著、サンマーク出版)をどう見るか [健康情報、本当の話]

『病気にならない生き方』(サンマーク出版)という本が売れに売れました。新谷弘実さんという医師が書いた本です。120万部突破したそうですね。ただし、売れていることと、中身が積極的に評価できるかどうかはまた別の話です。売れている本だけに、すでに多くの方から批判が出ているようです。その批判が正しいかどうかを含めて、冷静に判断する必要があるのではないでしょうか。

結論から述べますと、新谷弘実さんの『病気にならない生き方』(サンマーク出版)については、次のような特徴を持っていると考えます。

・新造語や独自のPRで目新しさを打ち出している
・各主張は健康関連の書籍が取り上げてきた「情報」について総花的に触れているに過ぎない
・各主張は経験を強調する一方で、科学的データを示していない
・誰でも言える「正しいこと」と、医師の発言として「相応しくないこと」が混沌としている

では、具体的に見ていきましょう。



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「医師になって四十五年ものあいだ、私は一度も病気になったことがありません」(プロローグ)

「胃腸内視鏡の専門医になって約四十年がたちましたが、じつをいうと私はまだ一度も死亡診断書を書いたことがありません」(第一章)

いずれも、書き出しはここから始まっています。なぜ繰り返し冒頭に「一度も」という記述を持ってきているのか。

それは、新谷さんに、これによって読者の信用と関心を一気に獲得しようという明確な意図があるからでしょう。

たしかに、そのくだりを見る限り、「がん患者を100%治せる絶対的な名医」のように解釈する人もいるでしょうし、それほどの人なら言っていることも信じられる、と思う人も多いでしょう。

しかし、私は逆のことを考えました。

野球の守備で、名野手の守備率は限りなく10割に近いが決して10割にはなりません。むしろ下手な野手ほど10割になりやすい。名野手ほど守備機会も多く難しい打球に積極的に向かっていきますが、下手な野手はきわどいあたりは積極的に追わずにヒットにし、自らの守備責任を回避することがあるからです。

見かけの数字だけで守備の巧拙はわかりません。

新谷さんの受け持ち患者は、胃がんなどに比べれば転移が比較的優しい大腸がん、しかも早期が主な受け持ちと書かれています。

重篤な転移のあるがん患者を含めて「死亡診断書を1度も書いたことがない」のならブラックジャックも顔負けの奇跡ですが、要はごく限られた範囲の早期がん患者しか扱っていないのです。

がんは、全てのがんを合わせても治る確率が50%といわれています。

2人に1人は再発や転移をし、残念ながら多くはそれが原因で亡くなります。

医師として、がん患者の死に立ち会うということは決して恥ずべきことではありません。

むしろ、がん治療と関わっていながら患者の最期に立ち会わないというのは、“その程度”の仕事しかしていないのかという意地悪な見方すら出来ます。

いずれにしても、それは決して誇ることかどうかはケース・バイ・ケースです。



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もちろん、新谷弘実さんの内視鏡医としての技術や実績を否定したり、早期の大腸がんを軽く見たりしているわけではありません。

大腸がんとその転移で6回も手術をしながら生還した関原健夫さんは、『がん6回 人生全快』の中で、新谷弘実さんとの出逢いを感謝しています。

ただ、「死亡診断書を1度も書いたことがない」からといって、がん患者を100%治せるということではないし、すべてのがん治療に通暁しているわけでもない、という冷静な見定めを確認しておきたいのです。

(次回に続く)
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はくちゃん

おはようございます
ご訪問いただきありがとうございます
これからもよろしくお願いします

by はくちゃん (2010-10-14 08:36) 

Loby

ご訪問ありがとうございました。
ベストセラー、必ずしも良本ではないという典型的な見本ですね。
by Loby (2010-10-14 10:11) 

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