闘病の体験談だけで真実はわからない [健康情報、本当の話]
闘病の体験談を書籍やサイトで見ることがあります。闘病のリアリティも感じるし、自分が闘病の本人や家族なら参考になったり元気づけられたりすることでしょう。ただ、体験談は個別の例というだけで、それ以上でも以下でもありません。つまり、患者の体験談をいくらたくさん集めても、それだけで客観的に病気の対策が確認できるわけではありません。
前回から、2003年に開かれた「千百人集会」と呼ばれるがん経験者の集会で話題になった、NPO法人ガンの患者学研究所(ガン患研)代表の川竹文夫さんについて見ています。
川竹文夫さんは、元NHKのディレクターです。
44歳だった1990年に腎臓がんが発覚。腎臓の片方をすべて摘出したものの、「2~3年以内には、肺や脳に転移するだろう」と宣告されたがん経験者です。
「再発予防にすすめられたインターフェロンは十日あまりで中止。以来、自分で治す道を求め」ることにし、ディレクターとして、日本国内はもとより海外にまで脚を延ばし、生還者の体験談を集め、発病から2年後にその成果を「伝説の番組・教育テレビスペシャル『人間はなぜ治るのか』」という3本の1時間番組にまとめたといいます。
以来、ガン患研を設立し、講演会やビデオ、書籍の頒布を行うようになったそうです。
患者やその家族の立場に立って考えれば、その主張にエビデンスがあろうがなかろうが、現実に川竹文夫さんの制作した番組に生還した人が出演し、1124人が集会に参加しているのだから、その事実は何よりの心の支えになる、という考え方があっても不思議ではありません。
川竹文夫さんも、44歳という若さでがんを経験した時は、大変なショックだったでしょう。
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後に紹介するビデオでも語っていますが、川竹文夫さんのNHK生活は、「放送総合」と呼ばれるディレクターやアナウンサーではなく、受信料の集金職員がスタートでした。
外部からはわかりにくいのですが、同じ「NHKの仕事をしている」といっても、通常は集金職員が放送の現場で仕事をできるようになるというケースは稀です。
おそらく、川竹文夫さんはディレクターに採用されるまではもちろんのこと、採用されてからも“生え抜きディレクター”に負けないようにと、相当な努力を重ねたのだと思いますし、その負荷ががんの発病に影響を与えた可能性もあります。
とすれば、がんになった時点で、「真面目に頑張ってきたのに、いったい自分の人生は何だったのだろう」と、人生観や価値観を根底から考え直したくなるような心理状況に陥ったことは想像に難くありません。
だからこそ、その後、ジャーナリストとして、自分の足で調べ上げた満足感、実際に生還した人と出会えたことによる手応えをそのときに感じたのでしょう。
しかし、水を差すようですが、その1124人は、がん患者全体のいったいどのくらいの割合かといえば、ほんの一握りに過ぎません。
まして、闘病中1000人はもちろんのこと、「元患者」124人にしても、再発や転移がないと断言できるわけではないでしょう。
要するに生きているがん患者を1000人余り集めただけですから、全国から声をかければ実はそれほど難しいことではありません。
また、いくら生還者の体験談を集めても、そこに客観性、再現性ある法則を見いださなければ、学ぶべきものはありません。
万人に通用する普遍的な悔いのない選択には、やはりその主張が科学的にはどうなのか、という情報が必要です。
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中には、「そんなものは知りたくない。私は余計な情報は要らない。信じたくなる情報だけがあればいい」という人もいるかもしれません。それもひとつの価値観でしょう。
その一方で、科学的な根拠はどうなのかも含めて本当のことを知りたい、という人もいます。その「知る権利」を妨げることはできません。また、知ることで異なる考えや選択をすることもあるかもしれません。
川竹文夫さんに期待するがん経験者にとっては、がっかりすることもあるかもしれませんが、川竹文夫さんはエビデンスという点では首を傾げざるをえない発言も多々あります。冷徹に見ればこう解釈せざるを得ない面がある、ということを次回から書いていきます。
(つづく)
詳しくはコチラ>>
前回から、2003年に開かれた「千百人集会」と呼ばれるがん経験者の集会で話題になった、NPO法人ガンの患者学研究所(ガン患研)代表の川竹文夫さんについて見ています。
川竹文夫さんは、元NHKのディレクターです。
44歳だった1990年に腎臓がんが発覚。腎臓の片方をすべて摘出したものの、「2~3年以内には、肺や脳に転移するだろう」と宣告されたがん経験者です。
「再発予防にすすめられたインターフェロンは十日あまりで中止。以来、自分で治す道を求め」ることにし、ディレクターとして、日本国内はもとより海外にまで脚を延ばし、生還者の体験談を集め、発病から2年後にその成果を「伝説の番組・教育テレビスペシャル『人間はなぜ治るのか』」という3本の1時間番組にまとめたといいます。
以来、ガン患研を設立し、講演会やビデオ、書籍の頒布を行うようになったそうです。
患者やその家族の立場に立って考えれば、その主張にエビデンスがあろうがなかろうが、現実に川竹文夫さんの制作した番組に生還した人が出演し、1124人が集会に参加しているのだから、その事実は何よりの心の支えになる、という考え方があっても不思議ではありません。
川竹文夫さんも、44歳という若さでがんを経験した時は、大変なショックだったでしょう。
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後に紹介するビデオでも語っていますが、川竹文夫さんのNHK生活は、「放送総合」と呼ばれるディレクターやアナウンサーではなく、受信料の集金職員がスタートでした。
外部からはわかりにくいのですが、同じ「NHKの仕事をしている」といっても、通常は集金職員が放送の現場で仕事をできるようになるというケースは稀です。
おそらく、川竹文夫さんはディレクターに採用されるまではもちろんのこと、採用されてからも“生え抜きディレクター”に負けないようにと、相当な努力を重ねたのだと思いますし、その負荷ががんの発病に影響を与えた可能性もあります。
とすれば、がんになった時点で、「真面目に頑張ってきたのに、いったい自分の人生は何だったのだろう」と、人生観や価値観を根底から考え直したくなるような心理状況に陥ったことは想像に難くありません。
だからこそ、その後、ジャーナリストとして、自分の足で調べ上げた満足感、実際に生還した人と出会えたことによる手応えをそのときに感じたのでしょう。
しかし、水を差すようですが、その1124人は、がん患者全体のいったいどのくらいの割合かといえば、ほんの一握りに過ぎません。
まして、闘病中1000人はもちろんのこと、「元患者」124人にしても、再発や転移がないと断言できるわけではないでしょう。
要するに生きているがん患者を1000人余り集めただけですから、全国から声をかければ実はそれほど難しいことではありません。
また、いくら生還者の体験談を集めても、そこに客観性、再現性ある法則を見いださなければ、学ぶべきものはありません。
万人に通用する普遍的な悔いのない選択には、やはりその主張が科学的にはどうなのか、という情報が必要です。
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中には、「そんなものは知りたくない。私は余計な情報は要らない。信じたくなる情報だけがあればいい」という人もいるかもしれません。それもひとつの価値観でしょう。
その一方で、科学的な根拠はどうなのかも含めて本当のことを知りたい、という人もいます。その「知る権利」を妨げることはできません。また、知ることで異なる考えや選択をすることもあるかもしれません。
川竹文夫さんに期待するがん経験者にとっては、がっかりすることもあるかもしれませんが、川竹文夫さんはエビデンスという点では首を傾げざるをえない発言も多々あります。冷徹に見ればこう解釈せざるを得ない面がある、ということを次回から書いていきます。
(つづく)
詳しくはコチラ>>
2014-01-07 13:35
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