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羊水が腐る? [健康情報、本当の話]

「羊水が腐ってくる」といういい方だと、まるで女性のお腹の中には、若い時からずっと羊水が溜まっていて、高齢の妊婦はそれだけ時間が経ってくるので腐ってくるというイメージです。

しかし、それは医学的にも文学的にも間違いといわざるを得ません。

羊水は妊娠した時に、胎児の成長と共に羊膜の上皮細胞から分泌される無色透明の液体です。妊婦が10代でも30代でも40代でも、羊水は妊娠してから産生されるものです。

そして、妊娠の進行につれて胎児の上皮細胞、胎脂、尿など代謝物が混入し、妊娠末期にはいくぶん乳白色状の混濁を示してきます。厳密な表現にこだわりますが、「腐ってくる」のではなく「濁ってくる」のです。



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羊水量は妊娠の経過と共に徐々にその量が増え、妊娠16週ごろには約190ml、妊娠32~35週には約900mlに達します。これも、高齢の妊婦でも若い妊婦でも同じです。

そもそも、血液であれ他の体液であれ、人間の体内は常に新陳代謝しています。体液が腐ってくるようならその人も胎児も生きていません。羊水は無菌状態なのですから、「腐る」ことはありません。

また、羊水の濁りも医学的には大きな意味があります。胎児の代謝産物情報から、胎児の発育や先天疾患などの診断を得ることが可能だからです。

たとえば、妊娠中には羊水検査というものがあります。これは、羊水に含まれる胎児由来の細胞の染色体や胎児期にみられるタンパク質を検査するものです。

それによって、無脳症や二分脊椎、ダウン症などの可能性を疑うことになります。新生児の出産をそれによってやめてしまうこともあるため、倫理上問題もあるとされるデリケートな面はありますが、生まれた子どもを責任もって育てるかどうかを考えて出産するためには、必要な検査のひとといっていいでしょう。

このように、羊水は胎児の生殺与奪の権を握るだけでなくや、出産を巡る胎児の両親のさまざまな思いがそこに込められています。メディアで活躍する女性人気歌手の失言としては、あまりにも非科学的であるだけでなくデリカシーを欠いた発言だったといえるでしょう。

倖田來未さんのエピソードは、『健康情報・本当の話』(楽工社)に詳しい。
『健康情報・本当の話』 草野直樹=著 328ページ 定価2100円(本体2000円+税)
正体不明の健康食品から癌の代替療法、みのもんたと「おもいッきりテレビ」、倖田來未の「羊水が腐る」発言まで、さまざまなメディアに氾濫するデタラメな健康情報。これらの情報を豊富な資料と独自の取材を通じて検証し、誰もが気になる「本当のトコロ」を明らかに。さらに、健康情報に対するまっとうな接し方を示す。ヘルス・リテラシーが身につく一冊。
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