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水道水とアスベストの関係(4)加湿器でアスベスト入り水道水が飛散したらどうなる? [健康情報、本当の話]

水道水に混入したアスベストのリスクはどうなのか、ということについて前回は述べました。具体的には、中村三郎さんの『水道水も危ない!』(酣燈社)の第5章~第6章から引きましたが、同じような意見をもつ人はほかにもいます。また、「飲むリスク」が「吸い込む」リスクにかわることもあります。今回はそれらについてご紹介いたします。

前和光市長で医学博士の田中茂さんが、昨年7月に亡くなりました。そのため現在は削除されていますが、田中茂さんは、公式サイトでアスベストの恐怖を次のように記していました。
「私たちは毎日2㍑ほどの水を飲んでいますが、米国環境庁(EPA)は水道水1㍑に30万本のアスベスト繊維が含まれているときに、10万人に1人が発がんするリスクがあると発表しました。
日本では、昭和54年に、水道水1㍑に40~180万本のアスベスト繊維を検出したという報告があり、また、いろいろな病気で亡くなった人の肺の一部を薬品で溶かし、残ったアスベスト繊維を調べたら、昭和40年から49年までは52%でしたが、昭和59年から63年までは99%の人に繊維が見つかったという調査もあります。
水や大気中のアスベスト繊維は誰もが体内に取り込んでいる可能性が高いといえますね
http://emx.or.jp/saisentan/
「医学博士」という肩書きの人によるこのような警告があると、水を飲むのもためらってしまいそうですが、よく読んでください。

水道水にアスベストが含まれるという話と、「大気中のアスベスト繊維」を取り込む話を一緒くたにしています。

田中茂さんの記述は、医学博士として残念ですが非科学的です。

死者に鞭打つつもりはありませんが、公人で医学博士として世に発表した事実については、やはりきちんと言及すべきだと思い、ご紹介しました。

前回書いたように、アスベストは「吸い込む」から問題になっているのであり、水道水に混入しているものを「飲み込む」リスクは科学的に見てそれと同一視されていません。

もちろん、同一視されていないというだけで、「飲んでも絶対に安全である」とする保証はありません。

ただ、少なくともここでは、中村三郎さんや田中茂さんの指摘は、それを示す根拠が無い、ということです。

では、こういう場合はどうでしょう。



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水道水中に含まれるアスベストが、蒸発などによって飛散した場合、私たちはアスベストを「吸い込む」ことになります。

その場合のリスクはどうなのでしょうか。

例えば、私たちの暮らしに使われている加湿器というものがあります。

加湿器には、水をその温度の水蒸気に気化して加湿する「気化方式」、水を沸騰させてその蒸気を噴射する「蒸気方式」、微細な水滴を直接空気に噴霧する「水噴霧方式」などがありますが、いずれも水を大気中に噴射する仕組みのため、水中に含まれるアスベストが部屋中に飛散することになります。

そこで筆者は、水道管からアスベストが流れ出た、アスベスト入り水道水を使った加湿器を6畳間で一晩つけっぱなしにした場合、水道水からのアスベスト再飛散のリスクはどうなるか、という計算をしてみました。

加湿器による水道水からのアスベスト再飛散を、6畳間を例にとって具体的に計算してみましょう。

木造軸組工法で6畳の部屋は、内法寸法(有効面積)で3・48m×2・57m=8・94㎡とし、高さをかりに2・2mとすると19・7立方メートルとなります。

それに対して、水2リットルを加湿器で蒸発させ、その中に含まれるアスベストがすべて室内に拡散したとします。1立方メートル=1000リットルですから、約20立方メートルは2万リットルです。

世界保健機構 (WHO) が「健康へのリスクが著しく低い」(1986年)とし、アメリカもアスベスト対策法で定める大気中アスベスト敷地境界基準は10本/1リットル以下ですから、それを満たすには、X÷2万=10本/1リットルとなり、Xは20万本となります。

つまり、水1リットル中のアスベストが20万本未満なら、すべてが部屋に飛散してそのまま部屋の中に留まったとしても、大気中アスベスト敷地境界基準内ということになります。

ただ、私たちが住む部屋というのは、部屋が外気から全く閉ざされているということは考えにくく、とくに木造なら隙間がありますし、トイレに起きた時に戸を開ければ空気は動きます。



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完全に閉ざされていたら、酸素不足になるでしょう。

つまり、空気はつねに一部が入れ替わっているのです。

したがって、20万本あったとしても、それがそのまま部屋に留まるということは考えにくいということです。

では、もし水道水にアスベストが混入していたとして、どのくらい入っているのでしょうか。

秋田大学医学部の斎藤勝美さんらは、「アスベストセメント管に由来する水道水中のアスベスト繊維濃度とその形態」を1993年に発表。インターネットでも公開しています(http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/sub050721asbestosement.html

それによると、864キロ中22%(191キロ)がアスベストセメント管であるA地区、同様に37キロ中78%(29キロ)のB地区、AB両地区と同源水で73キロの全区間が塩化ビニル管のC地区で計測した所、A地区は2万7000~27万、B地区は10万~21万のアスベストを計測でき、C地区からはアスベストは計測できなかったといいます。

斎藤さんらは、このことから以下を考察しています。
  • C地区からはアスベストを検出できないので、水道水へのアスベスト混入は、アスベストセメント管の浸食腐食によると考えられる
  • 配水管の約22%にアスベストセメント管を使用しているA地区では,測定した19地点全てからアスベスト繊維が検出された。これに対して,約78%を使用しているB地区では,4地点中の2地点が不検出であった。しかし,検出されたアスベスト繊維濃度はA地区,B地区とも同じ濃度レベルであった。このことから,A地区のほうがB地区よりもアスベストセメント管の侵食,腐食が進んでいると考えられる。
  • 今回水道水中に検出されたアスベスト繊維は、太い繊維状や繊維が束になった状態で、また比較的低濃度であることから、人体への影響はないものと考えられる


数字を見る限り、腐食が進んでいる場所は、20万本を超えている可能性がありますが、そうでないところは基準内に収まる可能性が高いということです。

どの地点が、20万本を超えているところであるか。アスベスト水道管が残っている地域は、当該水道局が責任もって情報を公開する必要があると思います。

すでにご紹介したように、東京都では、アスベストを使った水道管は、1988年時点では、全管種による総延長の17%(7万4,224km)を占めていましたが、2003年現在では3・2%(2万km)まで減りました。

これはさらに減る方向にあります。

東京都については、ひとまず安心できるところにありそうです。

地域的に不安な方は、地元の水道局に確認されるとよいと思います。

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